心優しい女性が野良美少年を助けようとする動きもあるが、変態女が支配するこの世界では、そもそも変態女でない個人が野良美少年を保護する権利は無いとされているので、法律を犯してまで美少年を救うことが出来ないというのが現状である。
したがって野良美少年が救われるのは、様々な団体が設立する施設に保護されるのを期待するしかなかった。
保護された美少年は、毎日の食事と寝泊まりする場所、そして同じ境遇の仲間達を得て、ようやく穏やかな日々を過ごすことが出来るようになるのだ。
ちなみに、学校に行けない野良美少年のために、施設では最低限の勉強を教わることになっている。勉強といっても「こくご」「さんすう」「りか」「しゃかい」のレベルではあるが、心の幼い美少年達にはそれで充分だとされている。
「それでは、今日は『黄暖化現象』について勉強しましょう。黄色の黄に、暖かいの暖と書いて、『おうだんか』と読みます」
この施設では、今は社会を教わっているようだが、温暖化現象の間違いではない。この世界では温暖化の代わりに黄暖化が社会問題として取り上げられているのだ。
「これは本で見るよりも実際に目で確認した方が分かりやすいので、今日はみんなでバスに乗って、社会科見学に行きましょう」
施設で美少年に勉強を教えている女性の言葉に、美少年達は外での授業というだけで大はしゃぎし、みんなでバスに乗る嬉しさを隠せないようにソワソワして落ち着きがない。
皆中学生ぐらいの年齢であるはずなのに、まるで小学生のようなはしゃぎ方をしているのは、それが美少年の可愛らしさなのか、それとも美少年はいつまでも小学生のように育てるという、この世界の教育方針のためなのか。
バスは出発してから1時間ほど走り続けている。その間はレクリエーションのようなもので、女性の指示に従って言葉遊びをしたり、皆で童謡を歌ったりと、やはり中学生ぐらいの年齢とは思えない、ほのぼのとした雰囲気になっている。
幼い顔立ちで、いつまでも声変わりしない美少年達なら、むしろその光景が似合うとすら思えてくるし、変態女に虐げられる運命の美少年達は、いつまでも子供のままでいることで、自分の運命や過去に受けた心の傷を、考えないようにしているのかもしれない。
そろそろ目的地に近づいてきた頃、バスがふと何もない道端で止まる。美少年達が何かあるのかなとキョロキョロし始めると、女性はマイクで喋って美少年達を静かにさせる。
「はい、みんな喋るのを止めて先生が指差す方を見ましょう。見えますか?あの向こうに見える学校が、今日みんなが教わる黄暖化現象が起きているところです」
女性が指差す方を見て、美少年達は大きく驚いた。向こうに見える学校らしき建物は、そこだけまるで黄色いフィルムを通して見ているかのように、周囲の空気が黄色くなっているのだ。
本来、空気は無色透明で、光の反射によって空が青く見えたりするが、昼間の明るいうちに黄色く見えることはまずあり得ないし、しかもそれがある建物の周りだけというのは、さらにあり得ない事だ。
これはあの学校のどこからか黄色い煙のようなものが発生し、もやのようになっているというのだろうか。再び走り出したバスは、その問題の学校へと向かっている。
学校の敷地内に駐車したバスから美少年達が降りると、ちょうど今は休み時間だったらしく、学校に見学に来る美少年達を見ようと、大勢の生徒が集まっていた。ここは女子校であるらしく、集まった生徒は当然女子ばかりであるが、その光景は美少年達には異様としか写らなかった。
一言でいえば、コギャルの大集団か。髪は脱色か金髪に染め、肌は全身を日焼けさせ、不真面目そうな顔にはメイクまで施し、ブレザーの制服にルーズソックスで身を固めて、ニタニタとした笑みを浮かべている。
恐ろしいのは、それが全員まったく同じスタイルだということだ。髪の長さや顔の作りに多少の違いこそあるものの、基本的には判で押したかのように誰もが同じに見えて、個人の区別など不可能とさえ思われるぐらいだ。
はしゃいでいた美少年達も、コギャル達のふてぶてしい、何をしでかすか分からない笑みに恐れを為して静まり返り、誰もがうつむいたまま、学校を見学するのを怖がっている。
幸いにも、その後すぐに授業の始まりを告げるチャイムが鳴ったので、コギャル達は遠巻きに美少年達を眺めただけですぐに帰っていったが、高校という場所が未知の世界の美少年達を怖がらせるには充分であった。
「さて、それじゃあ見学を始めましょうか。みんなこの学校に来て、辺りの空気はどうなっているかしら?」
遠くから学校を見た時はあんなに黄色く見えた空気が、いざ学校の敷地に入ると周りの空気が普通の色に見えることに美少年は疑問を持ったが、女性の指示で空を見上げると、青いはずの空が黄色く見えることに驚いた。
「黄暖化現象が起きているところは、遠くから見るとそこが一面黄色く見えますが、その中に入ると黄色く感じることはありません。しかし、空を見上げた時だけ空気が黄色くなっているのが分かるのです」
その後、美少年達は校舎の中に入り、待っていた校長の案内を受ける。女子校だからというわけではないが、校長もまた女性で、校長という立場の割には随分と若く綺麗で、やり手の女校長という印象だろうか。
「ところで君たちは、校舎に入ってきてから何か変だとは感じてはいませんか?たとえば妙に暑いとか、どことなく臭いとか…」
校長に言われて、美少年達もそういえばと口々に校舎の中の蒸し暑さと、どこからか臭ってくる微かな悪臭を指摘するが、それが黄暖化現象の効果だと校長は説明を始めた。
「この黄暖化現象は、黄暖化ガスによって引き起こされて、いつまでも周囲に漂います。そしてガスが溜まりすぎることによって、空気までが黄色くなってしまうのです」
黄暖化ガスも、空気と同じく無色透明な気体だと言われているが、過度に密集しすぎると黄色く見えるという性質を持っている。つまり、この学校が周囲から黄色く見えるのは、ここが黄暖化ガスの大量発生源になっているということなのだ。
校長は授業中の教室に美少年達を案内し、そこで思い思いに授業をサボっているコギャル達に声をかけ、黄暖化ガスがどうやって発生しているかを教えるように指示をすると、コギャル達は大笑いしてお互いに顔を見合っているが、そのうち一人のコギャルが立ち上がり、説明役を買って出た。
「えっとー、じゃあ今から黄暖化ガスを出すんでー、しっかり音を聞いてくださいー」
説明役ということで、丁寧な言葉を使っているつもりのコギャルだが、まったく丁寧になっていないことで他のコギャル達にゲラゲラと笑われながら、そのコギャルは美少年に背を向け、何故か尻を突き出した。
(続く)

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